【映画感想】あなたはどんなメッセージを受け取ったか『メッセージ』

ジャケットを見て、2秒で私はこう思いました。

「こればかうけじゃんw」

 

ばかうけは、我らが新潟県に本社がある栗山米菓さんが製造・販売しているお菓子です。いやーばかうけおいしいですよね、私は大好きですよばかうけ。ほんとばかうけする美味さなんで、あったらある分だけ止まらずバリバリ食べちゃいますね。

ジャケットを見てばかうけに見えた人は私だけじゃないはず。というわけで、ばかうけのシルエットに惹かれて観た『メッセージ』(原題:『Arrival』)。

原題よりも邦題の方が良いという非常にレアなケース。

想像以上に素晴らしい作品でした。難解なとこ多いけど、全人類必見な映画といっても過言じゃない。今回は個人的な解釈含めネタバレ全開です。

 

 

メッセージ (映画) - Wikipedia

 

 UFOが突然現れたり、7本足の宇宙人が乗ってたり、見たことない文字を伝えてきたり、主人公が未来を見たりと現実ではありえないフィクションの世界です。

でも、SF映画によくある見たことない武器で戦うシーンだったり、宇宙人とドンパチしたりといったシーンはありません。なので、正直途中眠くなります^^;集中力のあるときに観るといいですね。

アクション的要素はほとんどなく、人間模様だったり、人生の意味だったり、そういう人間的なところを宇宙人との出会いを通して表現している映画です。

 

 

 

あらすじ

ある日突然、地球上にUFO(ばかうけ)が出現した。その数12個。UFOには宇宙人が乗っており、彼らがやってきた目的を知るため、言語学者のルイーズ・バンクス、物理学者のイアン・ドネリー、アメリカ軍のウェバー大佐らが調査を始める。

UFOの中には2体の宇宙人、ヘプタポッド(7本足のタコのような生物)がいた。彼らと会話を試みようと試行錯誤していくうちに、ルイーズは自分に娘がいる光景や病気で娘を亡くしてしまう光景をフラッシュバックするようになる。娘を持ったこともないのに。謎のフラッシュバックに悩まされながらも、徐々にヘプタポッドの示す言語のようなものを解読できるようになってくる。だが完全に解読できるようになる前に、政府は彼らがやってきた目的を早く聞けとせかし、ヘプタポッドたちの文字で聞くと、「人類たちに武器を与えるためにやってきた」と解釈できる返答があった。UFOが出現した各国は通信をつないで調査結果を共有していたのだが、この返答に脅威を感じた中国軍は回線を閉じ、戦争の準備を始めてしまう。続くように各国も通信を切り、ヘプタポッドたちに滅ぼされる前に攻撃をしかける準備を進めてしまうが、ルイーズは納得がいかず、もう一度話をするため宇宙船に乗り込んでいく・・・

 

 

宇宙人の突然の出現で焦る国々

 宇宙人が突然やってきて、緊急避難勧告が出されてパニックに陥る国々。しかも宇宙船は地上から少し浮いた状態で静止しており、沈黙しているためとても不気味です。世界は恐怖と不安で包まれ、暴動が起きる国も出てきます。何もしてこないけど、未知の物体が佇んでいるだけで相当な恐怖ですよね。いつ攻撃してくるか分からないし、コミュニケーションもとれないなら早くどっか行ってくれとか破壊してくれとか、そういう負の方向へ考えが及んでしまいます。

ルイーズとイアンは恐怖を感じながらもヘプタポッドとコミュニケーションを取るため何度も宇宙船の中に入り、意思疎通を図ります。ルイーズは英語で”人間”や自分の名前である”ルイーズ”や”イアン”、”イアンが歩く”など身振り手振りで伝えていきます。それらに対するヘプタポッドの返答を1ヶ月以上かけて分析し、徐々に言語を理解していきます。ちなみにヘプタポッドたちはこんな文字を使います。 

 

 

(Designing an Alien Alphabet for “Arrival” + Subtraction.comより引用)

 

よく考えたなあこの文字・・・

 

宇宙人の目的と文字の表す意味とは

そもそもヘプタポッドはなぜ地球にやってきたのか。それはルイーズが彼らとの会話の中で明かされます。その目的は、彼らの星は3000年後に何らかの危機を迎えるらしく、それを人類に助けてもらうため武器を渡しにきた、というものでした。その武器はヘプタポッドが使う文字のことなのですが、武器を渡しにきたと解読した段階では何が武器なのか分かりません。なのでこのことを各国に伝えたところ「人類に武器を渡して人類同士を争わせるためにやってきたのだ」と中国は解釈してしまい、彼らとの戦争準備を始めるため通信を切ってしまいます。他の国も「やられる前にやらねば」という方向に思考が向かい、各国との協力体制は崩壊してしまいます。

しかし、ルイーズは諦めず彼らとコミュニケーションを取り続けます。謎のフラッシュバックに襲われながらも。そして、完全に彼らの文字を理解した時、ルイーズはフラッシュバックの意味も理解します。ヘプタポッドと出会ったときから見るようになった娘がいる光景や、病気で亡くしてしまう光景などは、全て未来に起こることでした。つまり、ヘプタポッドの文字を理解することで「未来が見える」ようになったのです。

 

ヘプタポッドたちには時間という概念がなく、人間のように「現在」「過去」「未来」が無いそうです。つまり時は流れるものじゃないということ。それが文字にも現れており、円形になっています。始まりが終わりで終わりが始まり。人間の文字は全て左右または上下に流れていきますよね。この辺の解釈は難しいですが、なんとなく分かります。感覚としてですが(;´∀`)

 

未来と現在を行き来できるようになったルイーズ

ヘプタポッドに核攻撃をしかけようとする中国。アメリカも撤退準備を始めている中、ルイーズは中国を止めるためにどうしたらよいか考えます。すると、1年半後にパーティで中国の指揮官であるシャン上将に「君からの電話があったから、攻撃をやめられた」と言われる未来を見ます。現在のルイーズはシャン上将の番号も知らないのに、未来でシャン上将に番号を知らないと伝えると「今、知った」と番号と妻の死ぬ間際のメッセージを教えられます。観てる時は超展開すぎて理解が追いつかなかった(今もあまり理解できてないけど(;´Д`))。そしてシャン上将に電話をかけ妻のメッセージを伝えたことでシャン上将は攻撃を中止し、再度研究成果を共有すると発表しました。

世界がまたひとつにまとまったことで、宇宙船はその場で姿を消していきました。

人類(ルイーズ)に武器を無事に渡し、その力を使って攻撃を止めてくれたことで満足したから帰っていったんでしょう。

 

未来が見えるようになったルイーズの選択

ルイーズは今まで自分が見てきたフラッシュバックは全て未来の出来事だと理解しましたが、それは決して良い未来ではありません。結婚し、娘を持ち幸せな時も過ごしていましたが、夫と離婚したり娘を病気で亡くしてしまうとても悲しい未来です。

宇宙船が去り、全てが終わったところで隣にいる未来の夫、イアンに「もし、未来に起こることが分かっていたらどうする?」と聞くと「もっと相手に気持ちを伝えると思う。今回一番の出会いは彼らじゃなく、君だった」とプロポーズされます。そしてルイーズは未来で娘のハンナとイアンと三人でいる未来を思いながら、静かに抱き合うのでした。

 

全体の感想

良い映画を観たなあ、、、出会わせてくれてありがとう、ばかうけ

SF、恋愛、家族愛、人間愛が全てバランス良くまとめられていて、それを彩る音楽やシーン構成も素晴らしい最高レベルの作品でした。アカデミー賞で作品賞や監督賞などの主要8部門でノミネートされているのも納得です。

以下、個人的に思ったことや疑問点です。

 

未来視という能力を言語の理解で獲得という発想がすごい

これは、今までに無いなーと思いました。なんか「力が欲しいか・・・ならばくれてやる」的な感じで与えられるようなものでなく、宇宙人がやってきてその文字を理解することで得られるという設定は他に無いのではと。しかもその文字もよく考えたなあと驚くデザインで、観てるこっちはなんのことか全く分かりません。ルイーズとイアンが協力して解読していき、ルイーズは完全に理解しますが、イアンは未来を見れていないことから理解はできていないようです。ルイーズは誰よりも心を開き、宇宙人を理解しようとしたからなのかなーと。

 

ヘプタポッドの言語は世界をひとつにしたのか

未来視という非常識な能力を手に入れたルイーズは、未来で「ヘプタポッドの言語について」という本を出版し、言語体系化してます。つまり、未来が見えるようになる人が増えるということ。その後世界がどうなったかは描かれてませんが、未来が見え、コミュニケーションも取れる言語だから世界共通言語になっていくのだと思います。それぞれの言語による微妙なニュアンスの違いも無くなり、解釈の違いで衝突することも無くなって、さらに未来が見えることからきっと争いの無い平和な世界を実現するのでしょう。でも、未来が見えるようになってもその未来が悪い未来で、みんながみんなルイーズのように受け入れて生きていけるわけじゃないんだろうなと思います。私だったらできる限り嫌なことは回避したいですし。悪い未来を避けた人間はどうなるかは分かりませんが、それは時間が経つことで起こる未来ではなく、それもまた人生の一部で決して悪いことじゃなく、その瞬間の気持ちを大切にして生きた結果であるから誇り、受け入れるべきことなんだろうと私は思いました。

 

 

 最後に、気さくでノリの良い監督なのがわかる日本に向けた動画です。冗談でしょうが、こういうプロモーションは親近感湧いて良いですねw

ドゥ二・ベルヌーブ監督が言ってるように、この映画を楽しむには作品を直感的に捉え、どんな些細なことも見逃さないことです。シーン構成や台詞のひとつひとつが物語を理解するのに必要なピースなので、何度も見直したい作品です。

本当に素晴らしい映画でした。観た後は、きっと人生を前向きに捉える力を与えてくれる、そんな映画です。観た後は、誰かと語り合いたくなることでしょう。

 

www.youtube.com

 

 

今までで一番長い記事になったな(゚∀゚)

ではまたー!