【映画感想】十徳ナイフなラドクリフ『スイス・アーミーマン』

ジャケットが強烈なんで去年公開されてからずっと気になってた作品。だってハリーが背中に人乗せて海泳いでるなんてどんな映画なのか気になりません?!

そしてどんな映画かと思えば、とんでもない珍作品でした。万人向けでは全くない、奇怪で珍妙で不思議な映画。でも、とても味わい深い映画です。

 

スイス・アーミー・マン - Wikipedia

 

『スイス・アーミー・マン』公式サイト

(※HP音出ますので見る時は音量注意)

 

あらすじ

無人島で助けを求める孤独な青年ハンク(ポール・ダノ)。いくら待てども助けが来ず、絶望の淵で自ら命を絶とうとしたまさにその時、波打ち際に男の死体(ダニエル・ラドクリフ)が流れ着く。ハンクは、その死体からガスが出ており、浮力を持っていることに気付く。まさかと思ったが、その力は次第に強まり、死体が勢いよく沖へと動きだす。ハンクは意を決し、その死体にまたがるとジェットスキーのように発進!様々な便利機能を持つ死体の名前はメニー。苦境の中、死んだような人生を送ってきたハンクに対し、メニーは自分の記憶を失くし、生きる喜びを知らない。「生きること」に欠けた者同士、力を合わせることを約束する。果たして2人は無事に、大切な人がいる故郷に帰ることができるのか――!?

(公式HPより引用)

 

映画のタイトルは「スイス・アーミー・マン」(原題:Swiss ARMY MAN)ですが、これは「スイスアーミーナイフ」からとっているそうです。ダニエル・ラドクリフ演じるメニーが多彩な機能を持っていて、まさにスイスアーミーナイフのようだからです。

 

メニーの多彩な機能は観てて楽しい

メニーに出会い、ハンクは無人島から脱出し、故郷に帰れるかもしれないと希望をもちます。流れ着いた新しい島の森でサバイバルをしてるうちに、メニーは只の死体ではないと分かってきます。冒頭で死体から出るガスでジェットスキーのように海上を走る時点でやばいんですが 笑

メニーの機能をいくつか紹介しますと、

・雨水を体に溜めておけて、胸をおすと口から出てくる(ウォーターサーバー)

・意志をもっているので会話ができる

・死後硬直した腕で大木も切れる

・歯でひげ剃りができる

・口からガスを逆噴射することで銃になる

・ち◯こがコンパスになる

などなど、このようにとても多彩な機能がありますね。まさにスイスアーミーナイフです。メニーの機能をハンクが使うシーンはどれもシュールで面白いです。ちょっとしたコントを観ているかのようで。でも下品なシーン割とあるので苦手な方は観ないほうがいいかも。

 

映画のテーマは友情や人生観、愛

メニーの存在やその機能性など奇抜な設定でコメディ要素に惑わされますが、この映画は人間的なテーマを扱っていると思います。

 

・メニーとハンクの友情、絆

森でメニーと共にサバイバルをしていくなかで、2人は様々な会話をします。ハンク自身の話、メニーの話、人生観の話など、会話をするうちに2人はどんどん仲良くなっていきます。メニーは死体ですが、ハンクにとっては友達のような存在になります。ハンクは生きてますが、メニーは死体。故郷に無事戻れたとき、2人はどうなるのか。ラストシーンでは、思わず涙が出るかもしれません。

 

・スマフォの待受に写った女性に恋するメニー

メニーはあるときハンクのスマフォに写っている女性を目にします。美しさに惹かれ、女性に恋をするメニー。故郷に無事帰れたら、彼女に告白して幸せな人生を歩むんだと決意します。そのために、ハンクとメニ―で声のかけ方から特訓したり、ハンクが女装したり、シチュエーションをリアルに再現するためにバスの車内を木で作ったりします。彼女との幸せな人生のために頑張るメニー。愛の力です。でも、メニーに協力的なのは、ハンクがその女性に恋をしていたからで、実際に自分が仲良くなるために考えていたことをメニーに教えているのでしょう。そしてスマフォの写真は、実は盗撮して撮ったものと後で分かります。この時点で、ハンクはコミュ障で人付き合いが苦手な感じのタイプの人間なんだと予想できます。でも、メニーに協力してあげる心優しい人間なんだなとも思います。

 

メニーとの出来事は、妄想なのか、現実なのか

この映画を観ていて考えていたのは、メニーがただの妄想で、ホントはハンクひとりで過ごしているのではないかということです。最初の無人島で自殺しようとしていたところから、メニーを見つけ共に脱出するシーンからもう非現実的だし、もしかしてハンクの心象風景なんじゃないかなと思いました。でも、最後の方でハンク以外の人間にメニーが認知されていることからメニーは存在していたんだなと分かります。森でのサバイバルも現実に行っていました。

おそらく、スイスアーミーナイフのような機能をもつメニーは映画の中では本当に存在したのでしょう。メニーと出会い、過ごし、少し変わったハンクがこれからどういう人生を歩んでいくのか、メニーはまた他の誰かを救いにいったのか、そもそもメニーは何者なのか、鑑賞した人たちの想像に委ねられています。

奇抜な設定で下品なネタも多い映画ですが、新しい表現を見せてくれる作品です。気になる方はぜひご覧になってみてください。

 

ではまたー!