【映画感想】あなたは、この法律をどう思うか『39 刑法第三十九条』
今回は久々に邦画の感想を。内容も雰囲気もシリアスで重い映画でした。
堤真一さんの演技がなによりすごい。
あらすじ
刑法
第三十九条 心神喪失者の行為は、罰しない。
夫と妊娠中の妻が刃物で惨殺されるという猟奇的な殺人事件が発生した。警察は現場に落ちていた舞台のチケットから犯人を劇団員の柴田真樹と断定、劇場で一人芝居を公演中であった柴田を逮捕した。
柴田の国選弁護人に任命された弁護士の長村時雨は、おとなしかった柴田の表情が、突然人が変わったように凶悪に変貌するのを目撃する。法廷でも突然意味不明の言葉を発する柴田に、長村は司法精神鑑定を請求した。
精神鑑定人に選任されたのは精神科教授の藤代実行。藤代は教え子の小川香深に助手を依頼する。藤代は精神鑑定の結果、柴田は解離性同一性障害(多重人格)で、犯行時は解離状態であり心神喪失状態にあったと鑑定する。
しかし香深は藤代とは別の仮説を立てる。香深は検察官の草間に直訴し、柴田の再鑑定の鑑定人となるのだった…。
(wikipediaより引用)
殺人を犯した柴田真樹(堤真一)が、どうやら2重人格者のようで、犯行時に心神喪失状態にあったため、刑法第三十九条によって罪に問えないのではないか。だが、本当に柴田は2重人格者なのか。柴田を精神鑑定した小川香深(長谷川京香)は疑問を感じ、再度、柴田を鑑定していくが・・・
「刑法第三十九条には落とし穴がある」ということが、この映画を観て分かります。2時間ちょっとあり長めですが、柴田の過去や犯行の動機、精神鑑定者の香深がすこしずつ真実に迫っていく展開は丁寧で見応えがあります。
話は重く、雰囲気は暗く、全体的に鬱々としている
とにかく、この映画は暗いです。夜や屋内や曇りのシーンが多く、明るいシーンはほとんどありません。登場人物にも明るい人間はいません。各々が自分の仕事をしっかりしていて、無駄に親しくしないような、現実感ある演技をしています。殺人事件を扱ってるのですから当然ですかね。
それと、みんなぼそぼそ喋っていて声があんま聞こえません。音量をいつもより2倍はあげないと聞き取れないところがとても多いです。それもまた映画の印象を暗くする要因になってたと思います。でも「何言ってんのか聞こえねー!」とイライラするかもしれません 笑
主人公、柴田真樹の過去になにがあったのか
2時間かけて、丁寧に作り込まれている映画です。徐々に明らかになっていく柴田の過去と、調査・分析が進む香深。クライマックスの公開裁判で行われる一対一の精神鑑定シーンは見ものです。ここに持ってくるまでの展開は見事でした。2時間って結構長いですが、堤さんの演技や話運びがうまく退屈せずに観れます。緊張の糸が常に切れないような感じ。
あなたは刑法第三十九条をどう思うか
ネタバレをしたくないので詳しく書きませんが、私はこの映画を観て刑法第三十九条のあり方を考えさせられました。人によっては「こんな法律必要ないだろ」と言うでしょう。自分の大切な人が殺されたのに、その犯人が「犯行時に精神に異常をきたしていたから罪に問えない」と言われ無罪になったらどんな気持ちになるか。あまり考えたくありませんが、私ならしばらく悲しみにくれたのち復讐の鬼になって犯人の前に現れて、そして・・・って感じです。法律が裁けないなら、自分が裁くしかないと。
でも現実には、本当に精神に異常をきたしている人がいます。生まれつきだったり、多大なストレスを受けたせいだったり、事故のせいだったり。そういう人が犯罪を起こさないとは限りません。だから刑法第三十九条は必要な法律だと思います。
問題は、心神喪失者・心神耗弱者なのかを鑑定するのがすべて精神鑑定者の”主観であること”です。
19年も前の映画ですが、法のあり方を考える良い機会になると思いますのでおすすめします。
ではまたー!